ぼく盲導犬、よろしくね

vol.07 盲導犬デビュー

訓練士たちへ歩行について相談中 パートナーとの出会い
「ずっと、ずっと待っていたんだよ。やっと会えたね。
ありがとう、ありがとう。」

その人は、白い杖を床に置いて、
僕の頭や身体を何度も何度も撫でてくれた。
初めて会ったばかりなのに、
僕はすぐにその人が大好きになってしまったんだよ。
だって、僕を包み込むその手がとっても温かく優しかったから。

そう、これがその後約8年間一緒に過ごすことになる
僕のパートナー(僕はお父さんって呼んでいるけどね)との
忘れられない出会いの瞬間。

初めて盲導犬と歩くお父さんは、
約4週間訓練センターで
僕と一緒に泊まり込みの訓練を行ったんだ。
盲導犬を持ったら、盲導犬ユーザーは
すぐに1人でどこにでも出かけられると、
共同訓練時に使用する宿泊室 思われているみたいだけど、
そんなことはないんだよ。だって僕はロボットじゃないから、
最初のうちはなかなか息があいにくかったり、
盲導犬ユーザーも上手にコマンド(指示)を
出せなかったりなど、
色々あるんだ。だからこそ、訓練士の指導のもと、
寝食を共にする共同訓練が
とても大きな役割を占めているんだよ。

共同訓練とは、パートナーとなる犬と生活を共にし、
お互いの理解を深めた上で、
安全に歩行する為の基本などを学ぶ期間です。
訓練センターに宿泊しながら、
約4週間、盲導犬との生活の仕方、
歩行などについて訓練してゆきます。


共同訓練
犬と暮らした経験がなかったお父さんは、
共同訓練期間中に盲導犬との歩行だけを
勉強するわけじゃないんだ。
僕の食事についてやシャンプーやブラッシングの仕方、
そして犬の健康管理についても
訓練士さんから一生懸命教わっていたよ。
たとえ目が見えなくても、基本的には
盲導犬ユーザーが盲導犬のお世話をするんだ。
フォローアップの様子 だからこそ、お互いの信頼関係も深まるのだろうね。

お父さんが僕を初めてシャンプーした時のこと、
今でもよく憶えているよ。
「ありがとうね」
「よく頑張ったね」
「グッド、グッド」
って何度も言ってくれたんだ。
思わず僕は嬉しくなって、
泡がついたままブルブルってしたら、
「ひゃ~、お父さんもキレイになったよ」って
大笑いしていたね。僕はそれ以来、
シャンプーの時間が大好きになったんだ。

自宅での訓練
約4週間の訓練が無事終了。
お父さんは訓練士さんと一緒に僕を自宅に連れて帰り、
今度は自宅から職場まで
安全に通勤できるための訓練を行ったんだ。
駅までの歩き方や電車の乗り換えなど。
その他、お父さんがお気に入りの喫茶店に入って、
僕をテーブルの下でダウンさせる方法など。
晴れの日を祝う「盲導犬ユニット出発式」 そうやって約1ヵ月以上にわたる共同訓練は終了したんだ。

「卒業して、1年経つとより息が合ってくる」と
多くの盲導犬ユーザーが語るように、
人にとっても犬にとっても、
新しいパートナーに慣れるには時間がかかるようです。
双方にとってスムーズに慣れてもらえるように、
定期的にフォローアップを行っています。
卒業後数年経ったベテランのペアであっても、
随時フォローアップを行っています。


盲導犬デビュー
共同訓練を終えて、いよいよ僕は盲導犬として正式デビュー。
僕のハーネスはまだまだまっさらで皮も少し堅いけど、
このハーネスがお父さんの手に、
そして僕の身体に馴染んだ頃、
今以上の強い絆ができているのかな。
そんな日を楽しみにしながら、
次回は僕と大好きなお父さんとの暮らしについてお話しするね。




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