そのネクタイメーカーはBREUER、社長はALAIN。
私はアランに「何故あの英国嫌いの仏国人がメンズウェアは英国調なのですか?」と問うてみました。
さらに、「フランスにはオペラ通りに有名なオールドイングランドという店がある。博物館のように古いコレクションから現代のものまで巨大なショップで今も栄えているのは何故ですか?」
また「婦人物では成功していないラルフローレンショップのMEN’S WEARは大変成功していますがそれは何故ですか?」 「確かにフランス人は英国人の無骨さや食べる物に対する無頓着さを軽蔑すらしていますね?」
彼の会社は1890年創業で、米国ではブルックスブラザース兄弟が確かボストンで仕立屋をこの前後に開業している。
アランは「英国の服飾が古い伝統もあり良いからだ」と応えた。
私は「スーツの神話」で語られている歴史考証をさらに噛み砕いて次のように説明した。

「メンズファッションの起源【1】」にあるように英国では1666年10月7日 チャールズ2世が宮廷における紳士の服飾をスーツシステムとした。この服飾術は隣国のフランスではこれらの服飾は約200年も全く受け入れられないでいたのであった。

時は1789年、フランス革命勃発。華美に耽け贅を極め、堕落した貴族に反発。サンキュロット派が革命の旗手となった。サンキュロット(キュロットを着用しない)派はこの頃貴族の特徴であったキュロットを着用する人々を皆殺しにした。
これ以降貴族はキュロットを着用しなくなったが、 一方難を逃れ隣国のイギリスに逃避した貴族は英国のカントリージェントルマンのライフスタイルにいたく感動した。もちろんフランスのようにこの国では革命は起きなかった。