どうして、こんな羽目に成ったのだろうか。
走馬灯のようにこれまでの事が思い浮ぶ。

あれだけ嫌だと思っていたのに、とうとうここまで来てしまった。
出ると決ったけど何時放映されるか判らない。
報道番組と繰り返し説明されているので、どの様な番組になるのか見当もつかない。
物語りではなく、実際の姿を正確に忠実に報道するということだ。

会社のオフィスにも新人研修会にも前触れと同時にカメラマンがやって来る。
カメラが回っている。緊張、意識する。
やがて30分もするとカメラマンの姿が見えなくなる。もう帰っちゃったのかなと…。
全く意識からカメラが外れる。どうもここからが彼らの本番なのだろう。
いつのまにか自然にいつもの通りに仕事が出来る。

この番組の事は知っていると思っていたが、観た事があると思った番組はどうもNHKのようだ。似た様な番組なのだろう。
心配した妻タミ子は、カンブリア宮殿の収録本を2冊購入して来る。
「少しは読んで勉強した方が良いわよ!」と。

第一巻、トヨタの張社長から始まっている。
こんなに偉い人と比較されてはたまらない。困ってしまう。
読んで行くと特殊な技術やすごい秘話があるわけでもない。
皆、当たり前の事を言っている。”普通の事がやれる”それが凄いのかな。
普通の事なら私も何とかなるかも・・・と少し安心する。

番組を仔細に観る。
小池栄子さんは、テキパキと冷たい印象だ。
村上龍さんは、髪の毛が多いガッチリした人だな。凄く人気のある作家さんだそうだ。

早速、村上さんの処女作「限りなく透明に近いブルー」を読んでみる。24才の時の作品だ。
すごい物語で体験しなければ書けない・・・描写が凄すぎて頭がくらくらする。
半分読んでダウンする。私の年齢、体力ではこれ以上進めない。恐ろしい才能の人だ。
軽い読物、エッセイ集をみつけた。
村上さんがシャツを買い漁るエッセイを見つけ嬉しくなって読んだ。どうもシャツオタクらしいな。
それにしてもあんなに高価なシャツを何十枚も購う財力にもオタク振りにも驚いてしまう。
やはり普通の人ではない。

シャツの話なら少し自信がある。
番組を観ていると村上さんの眉間の皺が気になる。
頻繁に皺を寄せる時もある。どうも気に入らない時のシグナルのようだ。
気難しい人か?少々短気な人かもしれない?。

この番組は対談がメインに構成されている。収録中にこの眉間に皺が寄らなかったら成功だな・・・。
しかし、小池さんの突拍子もない突っ込みは要注意だ。突然やってくる恐れがある。
頭の中で仮想問答が始まる。将棋の先を読むより難しい。
一般の人も来て観覧している中で2時間もスタジオで対談する。
間違いは許されない。失言しても「ごめんなさい、やり直します」とは言えない。
これは一種の戦だ。考えねばならない。

「村上龍」とは何者だろう。
どうして小池さんとのコンビなのだろうか。番組の意図するものは何だのだろうか。
こうなったら会社のPRを秘かに狙い、社員の期待に応えたい。
そんなに上手く行くわけはないか・・・。

視聴者は、ビジネスマンが中心かもしれない。
家に帰り風呂を浴びてビールでも飲みながら・・・大半の人がこんな状況だろうな。
すこし頭がリラックスしている状態だろうから、難しい話や早口にしゃべる事も禁物だろう。
何万、何十万の目が観察している。どんな小さな嘘も見抜かれるだろう。
顔の表情が重要だ。今更顔は変えられないしこうなったら何も考えずに自然体でいくしかない。
今までの私が裸にされる、それがテレビかもしれない。

聞くところによると、村上さんが4900円の弊社のシャツを予想外に気に入って何枚かネットで購入して下さっているらしい。
弊社のシャツを正しく評価してくれる、本物のシャツオタクに違いない。
これは幸先きが良いぞ。眉間の皺は寄らないかも・・・。

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