この早稲田大学の学生のレポートを読んでみてください。
2007年某日、早稲田大学での私の拙い講義を聴き、レポートをくれました。
思考の深さ、行動力、深い感銘を受けたと共に、日本の将来もまんざらでないという安心感に包まれました。

男性は自分が更なるステップを昇るためには自分に投資を怠ってはいけないのです。
服装の重要性を認識しなければなりません。
20歳の学生が英国に留学して体験から得たことは、まぎれもなく服装の重要性を語っていました。


こんにちは。
昨日「ファッションビジネスを通して考える金融システム工学」でお話を拝聴させていただき、質問(クールビズについて)をさせていただいた者です(青いラコステを着ていました)。
先生(不適切かもしれませんがこのように呼ばせていただきます)のお話に大変感銘を受けました、ありがとうござうました。
先生は講義の中で、日本人男性の装いについて厳しくご指摘なさっていらっしゃいましたが、私はそのお話を聞き、居ても立ってもいられなくなりメールさせていただいた次第です。大変ご多忙のこととは存じておりますが、目を通していただければ幸いです。

先生は講義中あるいは御社Webページのブログの中で、男が「正しく」装うことの重要さを説き、装いの点において日本の男性が極めて未熟であるとご指摘なさっていらっしゃいます。
このご指摘は、私の考えとまさに一致するものだったのです。無論、人生においてまだ数える程しかスーツに袖を通したことのない二十歳の学生の意見ですから、先生のような方の見識と比べると全く浅薄なものですが、それでも私は自分の考えが認められたような気がして嬉しくてたまらなかったのです。

正しく装うことが相手への礼儀であり、「自分」を表現する手段であるとするならば、日本人男性の大半は無礼で「自分」を持たない人間と言わざるを得ません。
「日本人は外国人相手の交渉事に弱い」などと、半ば決まり文句のようにいわれますが、無礼な人間は交渉相手とはみなされないでしょうし、交渉のテーブルに就 けたところで、「自分」の無い人間に交渉が務まるはずもありません。
一昨日、安倍晋三首相が辞任する意向を表明しましたが、私は彼がサミットのような国際会議の際に各国首脳との記念撮影に臨んでいる映像や写真を見る度に、情けなさのような感情を覚えていました。彼のスーツは私にはオーバーサイズに見えましたし、タイのノットも極めて貧弱で、スーツの型も時代遅れに映りました。彼の横にいるフランスのサルコジ大統領の堂々たる姿が羨ましくも思われました(イタリアのベルルスコーニ前首相も立派な装いだったと聞きます。ブッシュ大統領は先の日米豪の首脳会談でローファーを履いていた?ように見えたのですが)。
安倍首相の服装は一国の総理大臣の装いとしては不適切で、それによって彼の立ち姿や 会見中の様子もどこか頼りなげに思われました。彼は「美しい国」や「主張する外交」といった発言を度々していましたが、自らの装いはその真逆を行くものだったのではないでしょうか。もし彼のスーツがもっとモダンで、タイがディンプルのあるセミウインザーに結ばれていたならば、彼の考えはもっと国民に受け入れられていたのではないかと思います。私たち国民はメディアが伝える断片的な情報しか受け取れないわけですが、彼の装いひとつで同じ断片的な情報であっても伝わり方は変わっていたかもしれません。(長くなりましたので二通目に続けさせていただきます。)

日本のストリートファッションは世界一といわれています。ところが、ストリートで世界の注目を集めたひとたちの多くも、ひとたびビジネスやフォーマルの場にデビューするとまるで世界から相手にされなくなるのではないでしょうか。
最近ではセレクトショップで揃えたスーツと小物で全身を固めたビジネスマンもいるよ うですが、欧米人の着こなしとは何かが違うような気がしてなりません。

今年の春一週間程イギリスに語学ステイをしていました。
ロンドン郊外に滞在していたため、ほぼ毎日ロンドンの中心部に出かけていたのですが、オックスフォードストリートやリージェントストリートを歩くビジネスマンを見るとなぜか(妙な感情を抱いたわけではないのですが)ゾクゾクしてきました。
日本のビジネスマンで、パッと見ただけでこのような感情を抱かせる人にはおそらく今まで会ったことがありません。このあたりが、日本人と欧米人の「違う何か」なのかもしれません。
何が違うのかは私にはまだよくわからないのですが、その違いの原因は「社会に出るまでに正しい服を着たり見たりしたことがあるかどうか」だと思います。
現在の日本社会では、残念ながら、「美しい服」や「面白い服」を着たり見たりする機会は充分過ぎるほどに若者に提供されているにもかかわらず、彼らが「正しい服 」を経験する機会はほとんどないような気がします。

以上を踏まえて先生に伺いたいのですが、先生は例えば御社設立当初と比較して、日本の男性の装いは変化してきたとお考えですか。私が知る日本の装い事情というのはほんのここ2,3年のものに過ぎないのですが、それでも90年代と比較するとセレクトショップ人気もあって、市場には良い品が豊富に供給されるようになり、海外で経験を積んだバイヤーなどから洗練された着こなし提案などの啓蒙活動もなされていると思うのですが。

ここまで二通にわたる文章を読んでいただき、ありがとうございます。拙い表現もあったかと思いますが、お許しください。厚かましいお願いかとは思いますが、私の考えの不十分などについてもご指摘いただけると幸いです。

追伸:10月に一度鎌倉のショップにお邪魔させていただこうと考えています。鎌倉に行くのが初めてなので、街の雰囲気などを想像し、とても楽しみにしています。