いま、周りを見回して気付くのは、1950年代のようにピカピカの靴が見当たらないことだ。汚れた靴を履いている人もいないが、異常に光らせた靴もいない。ごく自然な「艶」が多い。

思えば、敗戦のショックから立ち直れずに足掻いていた50年代まで、占領軍は強くて偉大な存在。だれもがアメリカに憧れた。デッカイ米車、車から聞える音楽、そして運転している人たちのファッションなど。

覚えている。戦後間もないころに見た米兵の服装。カーキのシャツとパンツ姿だったが、シャツにもパンツにもアイロンの折り目がついていた。襟に付けた金色のバッジのカッコよさ。そしてブーツはピカピカだったこと。

銀座通りに兵隊がいっぱいいた頃、GIが日本人の子どもに靴磨きをさせていた光景を思い出す。靴を乗せる規制の台を片手にシューシャイン・ボーイがいっぱいいた。

わが靴磨きの原点はあのシューシャインにあった。

(つづく)