「多機能を売り物にしているナイフが昨今はやっているが、フィールドではあまり役立ちません」。実際に自分が体験したので、強い口調で言い切った。

初めての北海道行きの時、わたしは機能てんこ盛りの最新ナイフを持って行った。

河川敷でのキャンプ初日、わたしは得意顔で超多機能ナイフを取り出した。地元の釣り仲間はチラッと見ただけ、あまりのすごさにまいったに違いないと思った。

彼らは炊飯用の炉を石で組んでいた。まきが集められる。太い枝を切ってやろう、ナイフに付いているノコギリの出番だ。

ノコギリを引っ張り出す。初めて使うノコギリは、いかにも切れそうに見えた。ギコギコやるがひどく時間がかかる。考えてみれば、たかだか10センチほどのノコギリになにができるというのだ。

彼らが持っている大型ノコギリの方が、どれだけ機能的で有効かを見せつけられた。

(つづく)