わが中学・高校時代、頭の中は映画とジャズでいっぱい、勉強が入り込むスペースなどなかった。いまだったら間違いなく落第(いまは落第といわないらしい)だ。あのころ(昭和20年代)は学校ものんびりしていたし、話のわかる-ということは甘い-教師がいてくれて助かった。
夢中になっていた映画というのは、たわいもないアメリカ喜劇。映画通のクラスメートはフランス映画の話題で盛り上がっていたが、わたしはあのテの辛気臭い映画は苦手、ノー天気なのが好みだった。
思えば1950年代のハリウッドは黄金時代、優れたミュージカル作品や、愉快な喜劇映画が目白押しだった。日本では、戦前からのチャップリンはじめ、極楽コンビ、マルクス兄弟などと、戦後派との競演の時代。兄たちのごひいきはマルクスだったが、わたしは笑えなかった、センスが古いと感じていた。
ドタバタが終わり、笑いも転換期を迎えつつあった。
(つづく)