最近はギャバジンという名すら聞かないが、戦後、アメリカ占領時代のトレンドだった。
ギャバジンは、斜めに綾(あや)が走る丈夫な服地。アメリカ人が好んで身に付けたことから、日本人の間でも大流行した。濃色よりも中間色がきれいで、替えズボンとして好まれた。中にはスーツに仕立てるしゃれ者もいた。ゾロっとしたスーツで、ひどくアメリカしてみえた。いつかはギャバジンのスーツを着るのだと、青年くろすとしゆきは夢見ていた。
ギャバジンは、スーツ、替えズボンのほかに「スプリング・コート」という名の春先のほんの一時期だけ着る、おしゃれコートとしても使われた。また、ウールではなくコットンのギャバジンは「綿ギャバ」といって、防水加工をしてレイン・コートにした。
1960年代、VANはコットン素材のギャバジンでパンツをつくった。ノータック、尾錠付きの「アイビーパンツ」の誕生。白に近い綿ギャバ製、「メン・パンツ」のはしりである。
(おわり)