当日のテリーは正攻法ではなく、意表を付く作戦で現れた。
黒いジャケットだが、両袖だけが違う。クリーム色地にグレーのストライプが入っている。そばに寄ってみると、古いテーラーが背広の袖裏に使った「縞スレーキ」ではないか。首をひねっていると、テリーが種明かしをしてくれた。モーニング・コートをくるっと裏返して着ているのだった。まさに「裏ワザ」。
不思議な服だった。裏返して着るはずがないと思い込んでいるわたしは、まんまとテリーの術中に陥り、降参した。笑いながら「面白いでしょう、まともなカッコじゃ勝ち目がないから…」という。相手を驚かそうと着る服に工夫を凝らす、素敵なことだ。テリーは本当に服が好き、一見、無茶をしているように見えるが、彼は服を愛している。
この対談「へイルメリーマガジン」最新号に掲載されている。
(おわり)