戦前、男の日傘が超カッコいい時代があった。その頃の日傘は高価で、サラリーマンが買えるモノではなかったと聞く。旦那衆と呼ばれた高額所得者のステータスシンボルだった。

当時の旦那の態(なり=コーディネート)が落語にある。売れない たいこ持ちの半八(はんぱち)に語らせている。「安くない上布(じょうふ=上等な麻布)だネ。パナマ帽、金縁メガネ、ダイヤの指輪。お羽織といい、コウモリといい、お下駄といい……」。三代目春風亭柳好「鰻の幇間(うなぎのたいこ)」より。コウモリは日傘のことで、半八も1本欲しがっている。「1本欲しいネ。巻いてゴボウくらいの太さがスタイルがいい。75銭だと練馬大根みたいだ」細巻がカッコよかった。

昭和初期の75銭、今だったらいくらくらいになるものか、興味がある方は一度調べてみてください。安物でこの値段、ゴボウだったらひと桁跳ね上がる。昔の日傘は高い。だから良かったと言ってはいない。

(おわり)