ノーネクタイが当たり前となった最近の夏だが、わがサラリーマン1年生(1961年)のころでは考えられない乱暴な行為だった。

61年の夏、VANの男性社員―― と、わざわざ断るのは、女性も少数だが社内にいたからだ―― わたしの配属部署の企画室(まだ室で、部に昇格するのは青山へ移る64年以降)には、女子美出の女性がいた。

女子社員がどんな服装だったかまで覚えていないが、いまでいうカジュアルな傾向だったと思う。

VANにドレスコードはなかったが、全員申し合わせたように似たカッコをしていた。数年前、大阪本社からVAN東京営業部としてスタートした営業主体の会社なので、専門店、百貨店に売り込むのが主な仕事。

夏だからといってノーネクタイでは礼を欠く、という訳でジャケット、ネクタイ着用「ねばならぬ」の時代。

そして、誰もが疑うこともなく従っていた。

(つづく)