わたしの舌は鈍くて何を飲んでも分からない。だが、昔は銘柄は決まっていた。それは味が好みという訳ではなく、ビールといえば○○と、インプットされていたからだ。
父親はビールといえば「キリン」の人で、それも缶は駄目、瓶ビールでなければ……だった。それを見て育ったせいか、長い間キリンを愛飲した。ラベルの中国の空想上の動物「麒麟」の絵が好きだった。そういえば、学生時代、横須賀でいわゆるスカジャンの背中に、あのキリンを刺しゅうしたのを見てびっくりした記憶がある。
外国人にはカッコよく見えたのだろう。人のことは言えない。わたしも1980年代、「BUDWEISER」にほれ込んでいた。ビールはもちろん、おまけのロゴ入りベースボール・キャップやトートバッグが欲しくって、半ダース入りをよく買った。味ではない、デザインがバタ臭くて夢中で集めた。
ところで、いま「バド」はどうしているのだろう。
(おわり)
出典:Japan Archives Association