フランネルに続き、グレイに関する考案。「GRAY=灰色の。鼠色の」。現在の灰色は、物を燃やした後の灰の色。一方、鼠色は動物のネズミの色を指す。
色の使用にも様々な制約があった江戸時代―――いまでは信じられない縛りだが、これに近い思いを大東亜戦争(1941~45年)中に体験した。明るい色や目立つ色は禁止、国防色という名の陸軍軍服のカーキ色に近い色に日本全国統一された―――戦争とはこんな事がまかり通るのだ。
江戸時代に話しを戻す。庶民の間で茶と鼠色が流行した。お上に対するささやかな反発。「四十八茶百鼠」という言葉が生まれるくらい色にとことんこだわった。茶の変化を48色とすると、鼠には100色ものバラエティーがある。白に近いライトグレイは「白鼠」。桜の花のような淡く赤味がかったグレイは「桜鼠」。また、「利休鼠」は千利休の名を借りた緑がかったグレイ。などなど、グレイの奥はとても深い。
(つづく)