いま、「アルパカ」といえば、白い柔らかな毛に覆われた南米ペルー産の家畜を思い浮かべるが、半世紀ほど前は動物の名前ではなく、毛糸の種類だった。

アルパカは、ラムやシェトランドよりも高級な毛糸として、セーターやカーディガンなどに加工され、一部の人たちの間で人気が高かった。カシミヤがソフトの代表なら、アルパカはハード、シャリ感が好まれた。

1965年ごろ、VAN企画部ではアルパカのカーディガンがトレンドだった。上着をロッカーに掛け、ボタンダウンの上にアルパカのカーディガンを羽織るのだ。色はオフィス着向け黒かグレー、わたしは黒を愛用していた。

デザインは、ローボタンの4個、袖は太目。この形は、たしかジャック・レモンが映画の中で着ていたのをまねた。キャンパス・ウエアとしてのレタード・カーディガンとはまるで違う、オフィス向けの大人のカーディガンだった。

(おわり)