わたしが日傘を思いつき、さす気になったのは、10年ほど前の夏の暑い日。前日に聞いた落語のCDがヒントになった。
その日も朝からの猛暑。パナマ帽をかぶって一歩外へ出た、日差しの強烈さに目がくらんだ。そうだ、日傘にチャレンジするには絶好の機会、家に戻り傘を取り出した。
といっても、日傘ではない、フツーの雨傘。紫外線カットなど、機能は未知数だが、とりあえず日よけになればいいとの思いつきだ。
とはいえ、黒の雨傘では見た目にも暑苦しい。1本ある柄物なら日傘といえば通用しそうに思えた。ブラック・ウォッチチェックの雨傘を広げてみた。カッコいい! これで決まりだ。
わたしには、世の男性諸氏が抱いている「気恥ずかしい」感覚が欠落したのか、退化したのか、ともかく平気。ジロジロ見られたに違いないが、恥ずかしいどころか、自慢したいくらい。わが「日傘男子」デビューの日。
(つづく)