小学生のころ、6月1日になると、一斉に夏服に着替えることに決められていた。

白の半袖開襟シャツにショートパンツが夏の制服。ところが1日くらい肌寒い日がある。いまならカーディガンなど羽織るものがあるが、昔はなかった。冬服を着たいくらいなのだが、校則では認めていない。鳥肌立て、早く家に戻って暖かい服が着たかった。

制服と共に制帽も夏バージョン。白い丸帽 −− 通称「お釜帽」に替わる。実はあの夏帽はなかなかの優れものだった。帽子の素材がいい。わが家では「ピケ」と呼ぶ、白地で細い「うね」のある木綿地。べったりした平織りではないので立体的、しかも丈夫な生地だった。

わたしは長い間、「ピケ」または「綿ピケ」という名の綿布と信じて疑わなかった。つい最近、とんでもない勘違いをしていたことに気付く。

ピケはまったく別物で、帽子用生地ではなかったのだ。

(つづく)