6月1日は「衣替え」の日と決まっていた。

戦前は「衣更」と書いた。「衣更=衣服を着かえること。平安以降、四月朔日から袷(あわせ)を着、寒ければ下に白小袖を用いる。五月五日から帷衣(かたびら)、涼しい時は下衣を用いる。八月十五日から生絹(すずし)、九月九日から綿入、十月朔日から練衣(ねりぎぬ)を着用。江戸時代では四月一日、十月一日をもって春夏の衣をかえる日とした」(広辞苑)

現代の衣生活に比べると、何と細かく、厳しいことかと思う。だが、こと細かに約束事がある方が本当は楽なのだ。いまみたいに、なんでもあり、どんな格好をしようがおかまいなしの時代は、逆に何を着ていいか分からなくて苦労する。

自由とは、実は不自由なのを身を持って体験したことだろう。衣更ひとつ取り上げても、昔はこれだけの「縛り」があった。いま見ると、平安時代のドレスコードがうらやましく思えてくる。

(つづく)