いまや「花火大会」にふさわしいTPOといえば「浴衣」である。都内の花火大会の日、夕方からゾロゾロ浴衣姿のお嬢さんたちが集まってくるのを見ると、この日ばかりはどんな有名ブランドのドレスでも勝ち目はない。
長い間、浴衣を着ていないが、ひと昔前(というと約10年)より以前のことだから大昔は浴衣も着物もよく着た。大学生のころ、友人2人を誘って(1人じゃ照れ臭い)浴衣姿で銀座から浅草までデモった思い出がある。
銀座8丁目、現在高速道路の下は川が流れていて、現在の博品館の前に船着き場があった。新橋―浅草間に「水上バス」が運航されていたのだ。お客はまばらで、われわれのように浴衣が着たくって船に乗るような「酔狂」な人はいなかった。3人は隅田川の川風を懐いっぱい受けながらカッコをつけた。
浅草でおかに上がり、どこへ行ったか覚えはないが、浅草寺をお参りし、屋台の焼き鳥でも食ったのだろう。
(つづく)
Photographs by Raymond Patrick