1940年代後半、中学生だったわたしに大学生の兄が2人いた。新しい情報は兄たちから教わった。マージャンを覚えさせられたのもこのころのこと。
兄たちの会話の中でよく出てきたのが「ギャバジン」と「ラバーソール」だ。何のことか分からなかったが、話の前後からおしゃれに関する用語と気付く。
ギャバジンのズボンが欲しいの、ラバーソールの靴が履きたい、などと口にしていた。わたしがおしゃれに興味を持つようになったのは、兄たちのおかげ。
黒の学ランしか知らない時代のことだ、大人になったらギャバジンのズボンにラバーソールの靴を履いてやるのだと心に決めていた。
初めてのギャバジンのズボンは高校3年の時にかなえられた。ねだって買ってもらった既製品で、多分ツウタックの太いズボンだったと記憶している。グレーともベージュともつかぬ妙な色だったが、うれしくて、休みの日はいつもこれをはいた。
(つづく)