ギンガム・チェックの魅力にとりつかれたわたしは、ガールフレンドに教えてもらった下北沢(世田谷区)にある「コットン」という名の生地店へ通うことになる。
小さな店だが棚いっぱいおしゃれで、しかも安い反物が積んであって、まるで外国へ行った気分になれた。といっても外国など知らないのだから、想像上のアメリカである。
その店で一番目立っていたのは色とりどりのギンガム・チェックだった。赤と白のチェックだけでも大きいものから小さなものまで数種揃っていた。中で一番カッコいいのはどれくらいのサイズのチェックなのか学習を試みるのだが、目移りして分からなかった。
店はいつも若い女性でいっぱい。男はわたし1人だったが、ギンガム・チェックに目がくらんでいたので恥ずかしさも忘れて通うのだった。ボンヤリ眺めているだけのアメリカかぶれの青年くろすとしゆきが、ギンガム・チェックを買う決心をする日がやってきた。
(つづく)