IOCの言うエンブレムは、われわれがブレザーの胸につける紋章とは明らかに異質なものであった。では、ブレザーとは切っても切れないあのエンブレムは何と呼ぶのか。
その前に、欧米でエンブレムというと、中世に端を発する騎士の持つ盾に描かれた文様を思い描くようだ。日本でいえば戦国時代、戦場での旗印と同様の目的を持つ。
なので、ブレザーを飾るあの紋章のことはエンブレムではなく「BADGE(バッジ)」と区別するようだ。日本でバッジというと、金属製で社章や校章に使われるあれだ。
外国語は難しい。ワッペンからエンブレム、そしてバッジ、時代とともに呼び名も変わる。同じような変化に「ファスナー」がある。子どものころは「チャック」だった。大人になって「ジッパー」。共に俗称で、正しくは「FASTENER」。
いま、うっかりチャックなんて言おうものなら、なんだこのジジイ…と、にらまれる。
(おわり)