「節スタイル画教室」初日のことはいまも覚えている。
緊張で身を固くして出席したが、教室内の雰囲気は和やかで、
10人ほどの生徒が思い思いの位置でモデルを囲んでスケッチを繰り返していた。
こう描きなさい、などの指導は一切なく、おのおのが好きに描いてよかった。
ただ一つ、限られた時間中に1枚仕上げなければならない「おきて」があった。
5分間で全身を描き終えるくらいでタイムアウト。
セツ先生の「流儀」は短時間でデッサンを終える人物クロッキーだ。
それには瞬時に人体のラインを見抜き、紙に写し取る技術しかない。当然、チョコチョコした線では間に合わない。
太い線でひと筆書きのような「勢い」のあるタッチが要求される。
クロッキーのコツをのみ込むまでに2~3ヶ月かかった。
先輩たちと同じスピードで描けるようになれた日はうれしかった。
やれば出来る、ただしデッサンは狂っていた。
(つづく)