「鑑定士と顔のない依頼人」はミステリー作品。
美術品の著名な鑑定人でありながらオークションで腕を振るう名オークショニア(競売人)でもある
初老の男(ジェフリー・ラッシュ。好演)が、ある屋敷から財産の鑑定を依頼されるところから物語は始まる。
依頼人は広場恐怖症(こんな病気があることを知る)の若い女性……。
思いもよらぬ展開に観客はぼう然とするのだが、
何の疑いも抱かずに画面に引き込まれたのは、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の「力わざ」といえる。
主人公の鑑定人は異常なほどの潔癖性で、手の汚れを極端に嫌う。
1日中手袋をはめている、電話に出る時はもちろん、
食事をする、ワインを飲む時にも手袋を脱ぐことはないという変人。
豪邸に1人住まいの彼のクローゼットがすごい。
服のほかに手袋専用の棚があり、何10組もの手袋が整然と並ぶ……ちょっと不気味な光景。(つづく)