江戸川乱歩「少年探偵団」が誰の所有だったのかは知らない、次から次へと回し読みした。
1冊読み終わるころには新しいのが回ってきて、戦前に発行されたものはすべて疎開先で読んだ。
あのころの「少年探偵団」シリーズはハードカバーの立派な装丁。
ところどころに挿絵が入っていたが、この絵が魅力的だった。
小林少年の恐怖におびえる表情や、シルクハットに黒マント姿の怪人二十面相の薄笑いをたたえた顔など、
70年も経つというのにいまもはっきり覚えている。
何の楽しみもない集団生活の中、消燈前の自由時間は少年探偵団によって救われた。
そして、団員の証し「BDバッジ」(BOY DETECTIVE)に激しくあこがれた。
銅で出来たバッジ(軟らかいので指の爪で文字が彫れるのだ)を胸に付けた自分の姿を想像して眠りにつくのだった。
「乱歩」「少年探偵団」「集団疎開」はセットとなり、わが胸に深く刻み込まれている、いまもなお。(おわり)