日本は世界に誇る「魚食文化」の国というが、文化と呼べるかどうか。
ことウナギに関していえば、昔はいまほど大衆的な料理ではなかった。
子どものころ、ウナギはぜいたく品で、年に1度か2度、口にできればしめたもの。
子ども心にウナギは高級品、めったに食えるものではないと言い聞かせてあった。
それほど特別な食い物だったので、たまに食うとうっとりするくらいうまかった。
だが、また食いたいとは思わなかった。ウナギとはそういうモノと思っていた。
ウナギを食べる習慣は江戸時代に始まったといわれる。
あの気味の悪い魚を食べたのは「精」がつくからで、決してグルメではなかったらしい。
それが養魚技術や調理技術の進歩のおかげで、おいしいいまの「かばやき」がある。
スーパーの安売りを、家庭で食えるようにしたのがそもそものまちがい。
ウナギは昔のように高くした方がいい。
そして年に1、2度食えればいい。ありがたみも増すというもの。(おわり)