「男の服飾用語事典」は文字だけで、写真とイラストもなし。
アイビーが具体的にどんなシルエットなのか、文章から想像するよりない。
ブルックス・ブラザース、ストレート・ハンギング、テーパードなど、横文字だらけで
なんのことやらさっぱり分からない。なにしろ60年前、情報量は現代の数100分の1。
分からないのだが、本能的にアイビーが好き、こいつと生涯付き合うのだと勝手に決めた。
運命的出会いというのだろう、何の理由も説明もできない。
男と女の出会いに似た「ピピッ」と感じた「ナニカ」に引き寄せられたとしか言いようがない。
手探り状態のアイビーだった。ボタンダウンは襟先にボタンさえ付いていればいいと思っていた草創期。
失敗だらけ、恥をかきかき1歩1歩「ホンモノ」ににじり寄る日々。
あれから60年、人生の4分の3をアイビーと付き合ってきたが、いまだ追い付けず。
アイビーはわが人生の目標と、「立蔦」の日に思う。(おわり)