Maker's shirt 鎌倉

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くろすとしゆきオフィシャルブログ

269:早すぎたタータン


タータン・パンツ企画立案者としての責任を取り、1本購入(もちろん社員割引)。自ら宣伝のため毎日のようにはいた。

はいて分かったことがある。たしかに1967年当時、男でこんな派手なパンツはいない。だが、東京の人は気になっても見て見ぬふりをしてくれた。それに気付かなかったのはうかつだった。

たまたま、出張で東北へ行く機会があった。わたしはネイビーのダブル・ブレザー(VANではニューポートと呼んでいたアレ)にタータン・パンツを合わせて行った。街を歩いていると、人がよける、ジロジロ見る。これにはまいった、急に恥ずかしくなったのを覚えている。

いまや高校の制服になったブレザーにタータンのパンツやスカートだが、半世紀前は人騒がせのタネだった。「男のくせにあんなズボンなんかはいて…」まるで変態あつかいの時代があったのだ。

教訓:早ければいいってもんじゃない。

(おわり)

268:KENTのタータンパンツ


昨年12月8日から今年の2月17日まで、「タータン 伝統と革新のデザイン展」が三鷹市美術ギャラリーで開催された。

昔のKENTのタータンのパンツを、数少ないメンズファッションの参考品として出品した。いまならなんてことのない男物パンツだが、商品化した1967年はちょっとした騒ぎだった。

そもそもの始まりは、業者が持ち込んだ生地見本からだった。4柄ほどのタータンを何か使えませんかと机の上に広げた。当時、タータンは女性向けチェックで、都内に何軒かタータン・ショップがあった。

見ているうち、パンツにして紺ブレとコーディネートしたら売れるのでは……と、ひらめいた。4柄の中で地味な2柄を取り上げ、ベルトレスのスラックスにした。

結果は散々だった。人一倍おしゃれなVAN社員にもウケなかったパンツが、メンズショップで売れる訳がない。革新には時期尚早。

(つづく)

267:マイ・フェア・レディ


アンドレ・プレビンという新人ピアニストを知ったのは、1950年代半ば、「マイ・フェア・レディ」というタイトルのLPだった。

当時、輸入LPは3000円ほど、大卒初任給が1万円くらいだから、いかに高価なものだったか分かるだろう。買えないから、ジャズ喫茶という名のジャズLPを大音響で聞かせる喫茶店で、コーヒー1杯で2時間くらいねばるのがごく一般的ジャズファンの姿。

入荷したてのそのLPは、ピンクのジャケットで、大きなつばの帽子をかぶった女性が、ティーカップを持った写真。ドラムス シェリー・マン、ベース リロイ・ビネガー、ピアノ アンドレ・プレビンのトリオ。演奏するのは古いスタンダードではなく、ブロードウェイで公演中のミュージカル「マイ・フェア・レディ」の楽曲を取り上げた。

何て都会的でおしゃれなピアノだろう。軽妙洒脱なプレビンにわたしはとりこになった。

(おわり)

266:程の良いピアニスト 


アンドレ・プレビン 2019年2月28日死去、89才。

プレビンはわたしが大好きなジャズピアニスト。どこが? と聞かれたら、「程がよいとこ」と答えるだろう。

ピアノにかぎったことではないのだが、ジャズミュージシャンはどこか変わったところのある人が多いし、また好まれる傾向がある。演奏は誰にもまねのできないオリジナリティーに満ちた、個性的でなければならない、といわれるのはわかる。

個性は尊重されるべきとは思うが、わたしには「ほどほど」がいい。これはジャズに限ったことではなく、衣食住のすべてにいえる。個性的といわれる服装は苦手、ごくごく普通がいい。食べ物も同じ、凝った料理も素晴らしいが、毎日だったらどうだろう……。平凡な方がありがたい。

 アンドレ・プレビンは、毎日聴いて飽きることを知らない、程の良いピアニストだ。

(つづく)

265:半ダース入りの「バド」


わたしの舌は鈍くて何を飲んでも分からない。だが、昔は銘柄は決まっていた。それは味が好みという訳ではなく、ビールといえば○○と、インプットされていたからだ。

父親はビールといえば「キリン」の人で、それも缶は駄目、瓶ビールでなければ……だった。それを見て育ったせいか、長い間キリンを愛飲した。ラベルの中国の空想上の動物「麒麟」の絵が好きだった。そういえば、学生時代、横須賀でいわゆるスカジャンの背中に、あのキリンを刺しゅうしたのを見てびっくりした記憶がある。

外国人にはカッコよく見えたのだろう。人のことは言えない。わたしも1980年代、「BUDWEISER」にほれ込んでいた。ビールはもちろん、おまけのロゴ入りベースボール・キャップやトートバッグが欲しくって、半ダース入りをよく買った。味ではない、デザインがバタ臭くて夢中で集めた。

ところで、いま「バド」はどうしているのだろう。

(おわり)


出典:Japan Archives Association

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