鎌倉シャツではすっかり定番となったニットシャツ。
始まりは和歌山の丸編み生地メーカー「ヤマヨテクスタイル」との共同開発でした。
もともとはスポーツウェアのニット製造を専門としている会社。
彼らが開発したニット生地によって、鎌倉シャツに新たなジャンル「ニットシャツ」が誕生しました。
-『見た目はまるでドレスシャツ』。
その着心地と、お手入れの簡単さに魅了されるファンは増え続けています。
取組みが始まって3年目、二人三脚で Made in Japan のモノづくりを進めてきました。
36ゲージのニットシャツからはじまり、現在は46ゲージのニットシャツも登場しています。
これまでも、これからも、「世にないもの」を作り続ける彼らと、妥協のないモノづくりを続けて参ります。
工場の敷地内にはびっしりと丸編みの機械が並んでいます。
新しい技術の発展のため、ヤマヨは機械への投資は惜しみません。
しかし、機械を活かすのは「人」であり、日々その機械を動かす人々がいるからこそ、世にないものを開発し続けることができるのではないでしょうか。
- 鎌倉シャツとの取り組みが始まって3年目になります。弊社からドレスシャツを作りたいとの要望があった時、はじめはどのような印象でしたか?
全く想像しなかった分野でしたね。機能性重視のスポーツウェア研究は続けてきましたが、ドレスシャツをニット生地でという発想は全くイメージがなかったです。
- 鎌倉シャツの顧客様の中でも、一回着ると魅了されるファンの方が増えています。ニットシャツはどのような流れで生まれたのでしょうか?
試作段階でドレスシャツに使えそうなニット生地が開発できました。機能性を持つニットをシャツ生地に使用するための研究はそこから始まりました。
20年程前にも、ポロシャツの延長線上でネクタイができるニット生地のワイシャツがありましたが、一過性のものに終わりました。
現在では、技術や設備が進歩し、高密度で光沢のある、ドレスシャツという名前を付けていいクオリティのニット生地が生まれました。
- 機械の技術が追いついたことでニットシャツは生まれたんですね。
糸が追いついたこともありますね。素材である“糸”も大事なんです。高級な細い糸ができなければ、光沢をもった高密度なニット生地はできませんからね。
糸、それから機械と設備。それらと技術が合わさって、ああいうすばらしい生地が生まれたのです。
- 取り組みを3年続けたことで、質の高いニットシャツを皆様にお届けできるようになりました。それも全てはヤマヨの皆様の探究心のおかげです。
ありがとうございます。私たちが感じるのは、鎌倉シャツは素材に対する洞察力が非常に優れているということです。商品企画スタッフも非常に勉強されていて、打ち合わせで提案した生地の改善点をすぐに指摘してくれます。決定も早く、我々もすぐに改良できます。このコミュニケーションがとれる会社は、アパレル業界では少ないでしょうね。
通常は、生地屋と消費者の間にたくさんの人が関わっているので時間がかかります。鎌倉シャツは自社店舗で販売をしているので、消費者であるユーザーが目の前におり、何が売れていて、どこがいいか悪いかもわかっています。ユーザーの皆さんも目的をもって買いに来るから、消費者の“プロ”なんです。加えて、販売スタッフがお客様の声を聞いて本社に報告する。全てのやり取りが非常にスピーディーです。
また、貞末会長もVAN時代から「ドレスシャツはこうあるべき」とひとつの哲学を持っています。我々もそれに感化され、ご要望にお応えできるような商品開発を続けています。
- 新しい素材を開発するのは大変なことですよね?
現場の技術者は相当苦労していると思います。しかし、世の中にないものを追求していくのが我が社の一つの方針ですので、新しい素材にチャレンジしようと、新しい編み機を導入しています。ただ、導入しただけでは、それで何ができるかはわかりません。技術者が様々な工夫をしながらできた生地が鎌倉シャツのニットシャツになっているのです。
- 設備には先行投資をしているのですね。その中で、技術はどのように進歩していったのでしょうか。今後の展望や挑戦したいことはありますか?
3年前に取り組み初となる36ゲージニットシャツが登場し、今では46ゲージニットが商品化しました。36ゲージの編み機は当時の最新鋭設備。綿100%ニットで、きちっとしたドレスシャツに使える生地を作るという、ヤマヨ史上初めての挑戦でした。以前、貞末会長と対談した時にはすでに世の中に46ゲージ設備がありましたが、当時は合成繊維(ポリエステル)で編んでおり、衣服ではなく産業資材用に使っておりました。 それを衣服に使えるよう、“綿”で編んでみたいというイメージは私の頭の中にあったので、会長には「次のステップアップを考えています」ということを申し上げていましたね。
次のステップのことは常に考え続けていますが、ゲージにも限界がありますので、その限界を迎えるまでは挑戦したいと考えています。編む技術や素材の組み合わせを変えることで可能なことは、まだまだあります。限界までチャレンジしながらもメリット・デメリットを見極め、それを解消していくのが我々ヤマヨの務めですね。
- 和歌山県は昔からニットの有名な産地ですね。社長にとって和歌山で続ける意味とは?
和歌山を盛り上げたいという思いは常にあります。日本の丸編みニットの産地は、和歌山・北陸産地・尾州地区の3つあり、その中でも和歌山が40%のシェアを持っています。和歌山はもともと綿100%ニッターが圧倒的に多く、北陸はポリエステル、尾州(名古屋地区)はウール、というように棲み分けができているんです。
日本の3大産地の中でも、和歌山は100年の歴史とトップシェアを持っています。綿100%を基本に考えた上で、素材である200番手・300番手のような高級細番手の糸を紡績会社に研究してもらい、我々がそれをニット生地に編み立てていく。そうやって日本の繊維産業そのものを、グローバル競争の中、和歌山からボトムアップしていかなければ生き残れないと考えています。
- 山下社長が考えるニット生地の魅力とは何ですか?
ひとつ目としては、ニット生地は非常に生産性が高いこと。それでいて小ロットに対応できる。ニットは一着分の生地生産が可能ですが、織り物では難しい。生産性が高く、早くできて、小ロットに対応できるという点では、繊維産業の中でもニットは面白い!色々なものに挑戦しやすいのです。 ふたつ目は、伸縮性があるという大きな機能を活かせば、肌着からアウターウェアまで、様々な用途で使える可能性が無限にあるという点。このふたつですね。 ニット生地は、糸の“番手”と“太さ”と“ゲージ”によって工夫できますから、それに用途と素材がぴったりはまれば、更に面白いものが実現可能です。
ニット生地の特徴は、ウォッシャブルでありながら、ストレッチがあり、非常に着やすいという点。ニットシャツは動きやすくノンストレスなシャツとして、消費者の皆様にアピールができる商品です。それでいてフォーマルなドレスシャツにもなり得ます。今の消費者のニーズに非常にマッチングしているのではないでしょうか。
昨年から登場した46ゲージのニットシャツは見た目は織り物に近く、触ったり着てみたりしなければ、ニット生地とはわからない素材だと思います。今後は、ニット生地でも300番手に近いものを目指したいですね。
- これからも新しいニットシャツが期待できそうですね。
まだまだできますよ!期待していてください。