芯地なしでボタンダウン(以下B.D.)を再現する。それもかつての原点的なB.D.である。
困難といえば、我々鎌倉シャツの中堅スタッフが着用の実感を持ち合わせていない点である。弊社スタッフの多くは、IVYブーム後のセレクトショップが歩んだイタリアンテイストのシャツしか知らない。
世の中のB.D.シャツもいつの間にか原型から少し離れた襟型にシフトしてしまっている。そんな中、議論は進み、過去のアーカイブを参考に何枚もテストした。確かに、独特の襟のロールが美しい芯地なしの原型には縫製の難しさが想像できる。
実際に縫える工場があるのか?
かつてVAN のシャツを縫製していた工場は未だその技術を残しているのだろうか?
――幸いにもその工場は何名かの手練れの技術者がおり、その技を忘れていなかった。
では、パターン(型紙)はどうする。
弊社の技術陣と天才モデリスト柴山先生とのやり取りがはじまった。
柴山先生もイギリス・イタリー服の研究は最高峰を極めているが、アメリカントラッドとなると専門外だ。
そこで凄い事が起きた。
彼は自分の経験を排除し、アメリカ流儀の設計でパターンを一から考え直したのだ。其の結果、アメリカンジャケットに寄り添ったB.D.の襟型設計に行きついたのである。いわく、アメリカの設計理論は欧州のものとは異なっていたのだ。
こうして完璧とも言える、“新しく古い”B.D.シャツ誕生の運びになったのである。
弊社社員たちの期待も受け止めながら、2018年8月の販売に漕ぎ着けたのです。乞うご期待です。
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