貞末良雄のファッションコラム
Made To Measureについて考える
2018年8月28日 貞末良雄のファッションコラム
1945年、日本が第二次大戦に敗戦。焼け野原からの復興は、先進国に追いつけ追い越せで日本全体が一丸となって努力をしました。
その時すでに西欧諸国は洋服を着ていました。日本再興の立役者には老いも若きも、社会的場面に洋服(らしき物)が必要でした。しかし、既製服が無い時代。当時の日本には全国に7万店ものテーラーが存在し、採寸をして紳士服を仕立てていました。その意味では、日本の復興を支えたのは、Made To Measure(MTM)テーラーと言っても過言ではありません。
そもそも洋服にはMTMしかなく、縫製の技術を持ったテーラーが紳士服を創りました。
テーラーが創る仕立て服は高価でした。しかしながら、縫製の技術があっても、時代と共に変化する情報の入手が難しい時代。デザインには無関心だと言われても仕方がありません。当時の青年たちの目には、“金持ちの父親から紹介された古臭いデザイン”は魅力的には映りませんでした。
一方、既製服は最大公約数に裏打ちされた“決められたサイズスペックの物”でしたが、既製服会社の情報力はデザイン性に勝り。安価でした。
やがて、町のテーラーは既製服屋に駆逐され、世の中のマーケットを既製服が占拠したのです。
その既製服も競争の中で、海外生産や値段で勝負の時代を迎えます。そして、最大公約数で大量生産して販売する為に、売れ残りに悩むことになりました。
「注文を受けて作る」――こうすれば作りすぎは防げます。そうして時代は逆戻りです。「採寸して作る」――正に、戦後のテーラーです。
しかし、現代人の服装はサイズが合えば何でも良かった戦後には戻れません。
着る人の人格・美的センス・威厳を持ち、対面する相手に礼儀をわきまえるものでなければなりません。
“洗練された服”は選別され高い評価を得た、生き残った清楚なデザインです。それ故にクラシック音楽に例えられます。それは、いつの時代にも“良いもの”として高く評価されています。
それは服装も同じです。
鎌倉シャツがお勧めするMTM は、既製服で研鑽を重ねた私たちが、皆様に安心してご着用していただき、世界に誇れる姿をご提案出来ること。それが、私たちの社会的義務であると信じています。
お客様がデザインするシャツをお作り出来ないのは、このような理由からなのです。サイズが合えば良いではなく、グッドデザインでジャストサイズが重要なのです。
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